BtoBオウンドメディアでのSEOでよくある「成果の出ないパターン」とは?WACUL垣内勇威氏インタビュー


BtoBのオウンドメディアを開始し、2カ月が経った。

…けど、いまいちうまくいっている実感がない
上司からも、そろそろ成果出してよ!と言われ始めている。こわい。

ただ、いまいちどうしていいかわからないし、何か間違った方針をとっていないか、この早い段階で確認をしたい。

このような相談を頂きました。

そこでまずはこれだけは避けておきたい「オウンドメディアのSEO施策における、成果の出ないパターン」について、数万サイトのデータをもとに、日々BtoBのデジタルマーケティング支援をしているWACUL社の垣内勇威さんに色々とお聞きしていきます。

佐々木

BtoBオウンドメディアでのSEOでよくある「成果の出ないパターン」を教えてください。

垣内氏

いくつもパターンがあるのですが、ここではその中でも特によくあるものとして代表的な4つのパターンと対策をご紹介します。


【期間が短い&量が少ない】
はじめの100記事&1年間は
赤字を覚悟して始める

垣内氏

まず、「開始後、数カ月では成果が出ずに諦めるパターン」です。

成果までの時間軸を知らないのか、SEOですぐに成果が出たという、ごくわずかな成功事例に踊らされているんですかね。笑

佐々木

すぐに成果がでたものが喧伝されますもんね…。

垣内氏

でもSEOは普通時間がかかるんです。

弊社の調査では、SEOで成功した企業のほとんどが「2018年以前にオウンドメディアを開始している」というデータが得られました。

Googleのアルゴリズム上の問題もありますが、時間軸だけみれば「1年以上の取り組みが重要」といえそうです。

佐々木

意外と長いですね…今回の相談もですが、上司から「2カ月も経ったんだから成果をみせてほしいと言われてる」なんて声もよく聞きます。

垣内氏

3カ月未満でSEOの成果がでるオウンドメディアは10%以下です。

上司にも「まず1年は赤字でも続ける」ことを事前に説明しておきましょう。

https://wacul.co.jp/lab/pardot-trailblazer-day-2019/
佐々木

では「記事数」の観点ではいかがですか?

垣内氏

記事数については赤字を出しても100記事は書くこと、ですね。

弊社の調査によればですが、SEO施策は記事数が増えるほどに成果が加速度的に増えるです。

ある分野での記事数が増えると、Googleから専門的なサイトだと認知されるのではないか…と考えています。

とにかくオウンドメディアというのは、記事数が必要になるという覚悟で始めるべき、中長期的な施策です。

佐々木

まとめると「1年以上の運営をし、100本以上の記事を書く」ことが、オウンドメディアのひとつの基準・数字目標となりそうですね…!

オウンドメディアの失敗パターン①
【期間が短い&量が少ない】
  • オウンドメディアでのSEO施策はしばらくの赤字を覚悟して始める
  • 期間としては「1年以上」、記事数としては「100記事以上」がひとつの基準

佐々木

じゃあ、とにかく長期でたくさん書きます!!!

垣内氏

「とにかく努力をする」というのは、2つ目の失敗パターンの大きな原因ですね。笑


【成果の出る方針を知らない】
ノウハウ提供型コンテンツで
早く多くの成果を出す

垣内氏

2つ目の失敗パターンが「成果の出る方針を知らないせいで、無駄な努力」をすること。

成果の出る方針とは、当社の分類でいえばノウハウ提供型コンテンツ量産です。

佐々木

ノウハウ提供型コンテンツ…

垣内氏

人は「何か解決したい疑問」があるから検索をします。

その疑問に対して、専門的な知見を基にした回答を記事にする。または、業界内でしか手に入らないようなデータをもとに疑問への答えを返す

これが「ノウハウ提供型」のコンテンツです。

https://wacul.co.jp/lab/b2b-content-marketing/
垣内氏

取材記事やニュースなどの「読み物型」のコンテンツもあります。が、ノウハウ提供型と成約(CV)数で比較すると、13倍もの差があるんです。ノウハウ提供型の圧倒的勝利といえますね。

佐々木

オウンドメディアのSEO施策では、まずは専門的なノウハウ系記事を書いていくわけですね!

オウンドメディアの失敗パターン②
【成果の出る方針を知らない】のまとめ
  • SEOコンテンツで成果が出やすいのは「ノウハウ提供型」
  • ノウハウ提供型とは、読者の疑問に対して専門的な知見・経験を基にした回答をする記事
  • インタビューやニュースに比べ、成約(CV)が13倍多くなることも

佐々木

じゃあノウハウ提供型でたくさん読まれるように、検索される数が多いワードを重視して書いていきます!!

垣内氏

そういう短絡的な人が引き起こす失敗が、次のパターンです。笑


【検索流入は多いが、見込み客が来ない】
見込み客が読まないような記事は
書かない書いちゃったなら放置

垣内氏

まずオウンドメディアにおいて「とにかく検索ボリューム重視」の方針をとるのは愚の骨頂です

検索される数が多いからと言って、似たようなキーワードのジャンルでも、全然ターゲットが違う記事ができたら意味ありません。

佐々木

キーワードのジャンルが似ていても、ターゲットが違う。。。?

「何でこの人わかんないんですかね…」
垣内氏

「法人向けサービスの会社なのに、個人向けの記事を書く」などです。

具体的には…例えば法人用の財務・会計ソフトを売る会社が、個人用の「家計簿の付け方」の記事を書いてしまうこととかですね。

法人よりも個人の方が絶対数が多いので、検索される数そのものは増えます。が、法人の財務系のソフトを導入する担当者が、業務として調べるようなものでなければ、無意味です。

佐々木

いや、でも、個人的な検索のときに、役に立ったメディアに好感度が上がり、ゆくゆくは発注したくなる。こういうことがありそうですが、どうでしょうか?

いわゆる「アトリビューション※」のような考えです。

※アトリビューション:最終的に申し込み・成約に至ったところだけでなく、それまでにユーザーが通った他の経路もちゃんと評価する手法。主に広告の効果測定で使われる。
垣内氏

あー、アトリビューション笑

「あー、アトリビューション笑」
佐々木

垣内氏

アトリビューションというのは、そもそもマーケターが成果が出ないときによく言い訳に使う便利な言葉です。

ここ数日で検索した記事を思い出してください。

佐々木

んー…。

垣内氏

検索で出会ったメディアのロゴや運営会社まで見ますか?

佐々木

んー…。

垣内氏

というか、正直覚えていましたか?

佐々木

そもそも「2,3日前に何を検索したか」の時点から覚えてないです。

垣内氏

当社でも、実際はどうなんだろう?と何度もユーザ調査をしたことがあります。

調査時に「読んだ記事が載っていたWebメディアのロゴや運営会社を覚えていますか?」と質問すると、大抵の読者は「覚えてない。そもそもロゴなんてありましたっけ?」というレベルです。ほぼ全員。

佐々木

SNSで気になった記事なら覚えているんですが、検索した記事だと僕も覚えていなかったですね・・・・

しかも、IT、マーケティング職以外の「一般の」人々は、検索で出会った記事をどこが運営しているかは気にならないかもなと….

佐々木

ちなみに「この記事でいい感じにつなげられそうなゴール(CV)がないなぁ…」と思うような記事をすでに書いちゃった場合はどうしたらいいですか?

垣内氏

「そもそもターゲットに合わないから、CVにつながらない記事」があるという話であれば、それはもうゴミなので放置すべきです。先ほどの”法人用の財務・会計ソフトを売る会社が、個人用の「家計簿の付け方」の記事を書いてしまった”ような場合ですね。

ゴミにこれ以上投資をするべきではありません。

オウンドメディアの失敗パターン③
【見込み客が読んでない】のまとめ
  • 検索ボリュームを重視するあまり、見込み客が読まないような記事はそもそも書いてはいけない。
    (法人向け商品なのに、個人向け記事を書くことなどに特に注意。)
  • もし見込み客が読まないような記事を書いた場合には、リライトなどのコストはかけない。放置する。

佐々木

一方で「見込み客が来ていそうなのに、どうにも成約がない記事」もあるんです。

垣内氏

これも非常によくある失敗パターンですね。


【見込み客はいるのに、売れない】
CVポイントを見込み客の
検討段階と文脈別に用意

垣内氏

もしターゲットが来てくれているのに、成約につながっていないと感じる場合には

①CVボタンを文章冒頭に置く
②”障壁の低い”CVを用意する


これらの対応ができているかを確認してください。意外とできていないです。そして、対処すれば早期の改善が見込めます。

佐々木

CVボタンってこういうやつのことですかね?

↑こういうやつ
垣内氏

そうです。申し込みや購入など、成約に関連するボタンのことを指します。

このCVボタンを、記事の冒頭に設置してください。気になる情報、資料などであれば、記事を読まずともすぐに申し込んでくれることが多いです。

WACUL社のSEO記事。冒頭から申し込みのフォームが見えている。
佐々木

たしかに、自分も記事を最後の方まで読んでいないことが多いです…。

では“障壁の低い”CVを用意するというのはどういうことでしょうか?

垣内氏

質問で返すようですが、SEOという言葉を知ったばかりの人がいきなりどこかの制作会社に「問い合わせ」をすると思います

佐々木

いや、「SEOってそもそも自社で出来るの?」とかから調べると思います。なので、いきなり制作会社に問い合わせはしないかなと。

垣内氏

おっしゃる通りで、問い合わせなどは「障壁が高い」ので、検討が進んだ人のみに刺さるCVです。

一方、「はじめてのSEO記事のつくりかた」という無料のダウンロード資料だったらどうでしょうか?ダウンロードしてもらえそうではありませんか?これが「障壁の低い」CVです。

佐々木

たしかに、検討段階によって「越えられる障壁の高さ」が変わってきますね…!
他にはどんな資料が良さそうですか?

垣内氏

「記事の文脈、読者の検討段階とCVを合わせる」という考え方を持つといいと思います。

沢山ありますが、例えば以下の方法などですかね。

・検討が進んで、上司に説明する人向けには、導入/成功事例集
・料金、費用のページでは、料金表ダウンロード/見積もり依頼
・使ってみることで価値がわかるツールでは、無料トライアル

オウンドメディアの失敗パターン④
【見込み客はいるのに売れない】のまとめ
  • 読者の検討段階や文脈に合わせたCVを用意する
  • 検討段階の例
    【検討初期のCV=お役立ち資料】
    【検討進んだ段階のCV=他社事例集ダウンロード】
  • 記事文脈の例
    【顧客事例ページのCV=事例集ダウンロード】
    【料金ページのCV=料金表や見積もり】

まとめ:知っているだけで避けられる失敗パターンは多い

垣内氏

今回ご紹介したようなものは、どれも知っていれば避けられるものですよね。

これまでコンサルタントとして活動してきている中で「みんな同じところで転びすぎている」という状況を感じています。

そこで、これまでの私の知見を放出する『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』という書籍を執筆しました。

今回のインタビューではSEOコンテンツのみでしたが、マーケティングって当然SEOのみではないですよね?

そこで、書籍ではマーケティング全般について、身近な例をもとに解説しています。

ぜひ、読んでみてください。感想をツイートしていただけたら、積極的に拡散します!

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取材:佐々木ゴウブログ

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